「特別」の約束
背景は放課後の教室、高校生男女の会話です
- 小さな頃はさ、自分が特別だって思ってなかった?
にゃんこ
- 自分はほかとは違う何かがあって、自分しか出来ないことがあるはず……とか?
ひであき
- んー
にゃんこ
- 確かにそれを思ってた時もあったけど
にゃんこ
- もっと小さい時、小一ぐらいの時とかさ
にゃんこ
- 自分はいつか偉い人になるんだって漠然と思ってた
にゃんこ
- あー
ひであき
- わかる、かも。
ひであき
- でもさ、それって歳を重ねる事に虚実な自信だったことに気づいていって
にゃんこ
- たぶん、大人になっちゃったら平凡に成り下がるんだよね
にゃんこ
- 段々自分の限界を知っていく、か。
ひであき
- それは成長じゃないのか?
ひであき
- 成長かぁ……
にゃんこ
- でも、どんどん理想が落下していくだけだよね
にゃんこ
- そんなの私は成長だなんて言いたくない
にゃんこ
- そっか、まぁ価値観は色々あるわけだし、良いんじゃないかな
ひであき
- 確かに大人は狡い
ひであき
- だから、
にゃんこ
- ん?
ひであき
- 私は特別なままでいたい
にゃんこ
- だから
にゃんこ
- 特別なままで死にたい
にゃんこ
- 平凡に成り下がるぐらいなら、気分を落として自分の価値を知って絶望しながら進むより
にゃんこ
- 私は自分の価値を信じたまんま最高の気分で死にたい
にゃんこ
- うん
ひであき
- だからさ、私を特別に殺してくれない?
にゃんこ
- なんで俺に言うんだ
ひであき
- もっと他に、それこそ君にとって特別な人間が適任だろ
ひであき
- そうだね
にゃんこ
- でも私には特別な人っていないんだよね
にゃんこ
- だから、誰でもいいのかも
にゃんこ
- 誰が殺しても変わらない、か。
ひであき
- そう、特別な殺し方さえしてくれればね
にゃんこ
- どう?してくれない?
にゃんこ
- ここで俺は考えたのだと思う
- 少なくとも、俺にとっては彼女は特別だったから
- いいよ
ひであき
- 引き受ける
ひであき
- 本音は生きてほしい
- でも、彼女が望むのなら
- 殺してやるよ
ひであき
- そう、ありがとう
にゃんこ
- 彼女は嬉々として笑った
- じゃぁ、今度のテストで私は特別になるから
にゃんこ
- 学年1を取るから、そしたら特別になった私を殺してよ
にゃんこ
- あぁ
ひであき
- わかった
ひであき
- 約束だから
にゃんこ
- ちゃんと守ってね?
にゃんこ
- わかってる、約束だ
ひであき
- 凡人の俺は多分この約束を守るのだろう
- だって普通は約束は守るもので、そして俺は普通に縛られた凡人だったから