あの子が亡くなった日 11
実話です。 次回で最終回。
- 十一月中旬の深夜、
あの子のお母さんに
呼ばれました。
心音
- 病院に駆けつけて、
通いつめたあの
病室に飛びこみました。
心音
- あの子は、色んな機械を
体につけて、
眠ったままでした。
心音
- なぎ……!!
凪!? 起きて凪!
死なないで!
心音
- …………………
N
- うっすらと一瞬目を開けるも
すぐに閉じて、
ゆっくりゆっくり息を
していました。
心音
- 3DSを握ったままでした。
心音
- 長い長い時間が
流れました。
心音
- 実際の時間にして、
1時間。
心音
- 凪にすがって泣いていました。
心音
- 主治医さんも、看護師さんも、
凪のお母さんも
泣いていました。
心音
- 凪だけが
心音
- 笑っていました。
心音
- 来てくれてありがとうと
言っているように
見えました。
心音
- 凪……な…ぎ…
心音
- いやだ…死なないで……
心音
- ねぇ…凪……。
心音
- 目を開けてよ凪
まだあなたとやってないことが
たくさんあるんです
算数のテスト、
やってないじゃないですか…
二重跳びのやり方も
教えて貰ってませんよ…?
ねぇ凪、あなたは…
心音
- ここで死ぬような
人じゃあないはずです。
心音
- ピ──────────……
- 凪は
心音
- 息を辞めました
心音
- 凪の
心音
- うるさいくらいの鼓動は
止まりました
心音
- 凪は笑ったままでした
心音
- ありがとう…
心音
- 凪、ありがとう
心音
- 聞こえてないはずの
誰にも届かない声でしたが
N
- 私は呪文のように唱えました
N
- 凪のお母さんとお父さんは
N
- 私と同じくらいむせび泣いていて
N
- 私も泣きました
N
- 凪はもうここにはいませんでした
N
- 心音ちゃん…ありがとうね
凪のお母さん
- あの子もきっと、
幸せだったわ
凪のお母さん
- あなたのような…いい
お友達がいて…………
凪のお母さん
- それからしばらくの間、
私は事あるごとに泣いていました
心音
- お葬式の日は手紙を読み上げたり
しました
心音
- ずぅっと 泣いていました
心音
- 失った悲しみは
幼い私には耐え難いもの
だったのです
心音
- 心音ちゃん…
凪のお母さん
- これ。
凪のお母さん
- 凪のお母さんから
手渡されたのは、
おだやかな緑色の封筒でした
心音
- ミミズがのたうち回るような字で
『ここねへ』
と書いてありました
心音