あの子が亡くなった日 6
実話
- おはようございます。
心音
- …あれ? 来たの?
N
- …はい。
心音
- あの子は3DSで遊んでいました
心音
- 細くなって、真っ白になった
指が 懸命に
ボタンを操作していました。
心音
- 学校は?
N
- …………休みました
心音
- なんで?
N
- …あなたとの時間はもう少ししか
ないから…
心音
- バ~カ
N
- え?
心音
- 私はそんなことしてまで
一緒にいて欲しくないの。
あんたはあんたのやるべき事を
ちゃ~んとするの。
N
- 私は行きたくても行けないんだからさぁ、ちゃんと行ってよ。
ね?
N
- すごく嬉しいけどさ…、
そういうんじゃないんだ。
N
- な?
N
- …はい
心音
- ごめんなさい。
心音
- いいんだよ、謝らなくて。
N
- …………
心音
- あの子の優しい瞳を見ていると
すごく切なくなりました。
心音
- こんないい子が、
もうすぐ死ぬ。
心音
- 学校のクズよりずっとずっと
先に、あの世へ旅立つ。
心音
- 気づいたら、学校でのことを
話していました。
心音
- ぽつりぽつりと、
涙を流しながら話しました。
心音
- ………
N
- ごめんな
N
- …?
心音
- まあ、こうなるとは
思ってたんだけどなぁ。
あいつらがお見舞いに来たとき、
薬の副作用でゲロゲロ吐いてた
真っ最中だったんだよね。
N
- ここに来たら苛められるぞ~って
いうつもりだったんだけど、
来て欲しかったんだ。
N
- もう来なくていいよ。
辛いだろ?
N
- 辛くないです…
心音
- あんなのの傍にいるより、
こうしていた方が
よっぽど良い。
心音
- あなたが死ぬ辛さに比べれば
あのくらいはどうってこと
ないんです……
心音
- …強いなあ。
N
- まあ、うん。嬉しいよ。
ありがとうな。
N
- 首だけこちらに向けて笑う
あの子は、
どこか寂しそうでいて
優しい顔をしていました。
心音