Name 第8話
オリジナルストーリー。もともと演劇の台本用に作ったものなので、地の文はト書きとなっています
- ………………。
- 暗闇。
その中に、少女と男。
- 気がついたか。警察が間に合って良かったな
男
- …!あなたは……あの時の!
少女
- え…?警察って…もしかして、あなたが!
少女
- ああ、そうだ。間一髪だったな。
男
- …え?私、生きてるんですか?
少女
- まあ、生きているとも言えるし、死んでいるとも言える
男
- え?
少女
- 要は、ここは生死の分かれ目だ。
生きようと思えば、生きられる
男
- ………私は、生死の境をさ迷っているんですね
少女
- まあ、そういうことだ
男
- ……………
少女
- で、どうする
男
- どうするって…?
少女
- 「生きる」か、「死ぬ」か、だ。
こればっかりは、お前が決めるしかない
男
- …そんなの、決めろって言ったって
少女
- 決めなければ、お前は永遠にここにいることになる
男
- え!
少女
- 嫌だろう?早く決めた方がいいと思うが
男
- …そんな事言ったって
少女
- まあ、先に言っておくと、どちらを選んでも後悔はする
男
- そんなこと、分かっていますよ
少女
- なら、さっさと選べ
男
- ………あなたは、私のようなものがこれからも生きていたら、どう思いますか?
少女
- 別に、なんとも思わないが
男
- …そうでした。あなたはそういう人でしたね、忘れていました
少女
- …ただ、生きていることに、いいも悪いもないとは思う。
いいか悪いか、決めるのは自分自身だ。
それは、お前だけじゃない。
世界中、全ての人類に言えることだ
男
- !
少女
- 迷ったら、とりあえず生きてみろ。
あいつらも、捕まったんだ。もう、お前の恐れる者は、いない
男
- ………
少女
- 生きることは、つらいかもしれない。
また、新たな困難が待ち受けているかもしれない。
だが、心配することはないだろう。
もうお前を受け入れている奴がいるのだからな
男
- …イト、マコト。
少女
- あと、お前の体は老いることはなく、機能も低下することはないだろうが、普通の奴らと同じように、「最期」は迎えることが出来る
男
- !本当ですか!?
少女
- ああ。まだ、研究途中だが、もう確定に近い
男
- 研究…?だって、あなたは数学の…
少女
- あ。あれは嘘だ
男
- 嘘!?
少女
- 本当は、普通にお前のような奴を研究している
男
- …なんで、言ってくれなかったんですか?
少女
- あの場で言っていたら、お前はまずあそこから逃げ出していただろう
男
- …確かに
少女
- 世の中には、私たちのような者もいる。
だから、安心して過ごすといい。
残りの時間を
男
- …ありがとうございます。
私は色々な人たちに支えられていたんですね。
そういう人たちのためにも、私は生きます。
研究に費やしてきてくださった時間を無駄にしないように!
少女
- …そうか
男
- 光が差し込む。
- そろそろ時間だな
男
- あ、あの!
少女
- なんだ
男
- 最後に聞かせてください!
あなたの名前はなんですか?
少女
- 私の名前など、聞いてどうする
男
- 今度、ご挨拶に伺いたいんです!
少女
- それは構わないが、名前だけ知って、どうやって来るつもりだ?
男
- 場所は知ってますよ!
そうじゃなくて…
少女
- ちゃんと、あなたの名前を知っておきたいから
少女
- ……霧野 結都(ゆいと)
男
- …え?霧野……?
少女
- 男、微笑み
- 「俺」の名前まで聞き出して、やっと気づいたか。
まあ、色々とあいつに頼まれていてな
男
- え?あ、あの!
少女
- 詳細は、本人から聞け。
それじゃあ、また会う日まで。「フーカ」
男
- 光が強くなり、何も見えなくなる。
- ………………。