ひとり劇場

Name 第5話

オリジナルストーリー。もともと演劇の台本用に作ったものなので、地の文はト書きとなっています。

………………………。
いつものベンチ。
霧野が来る。少女は既にいる
霧野
よう
少女
待ちくたびれました
霧野
難題を出すほうが悪い
少女
そういえば、今日は彼と一緒ではないんですね
霧野
どうせ会ってくれないからな。それともなんだ?話してみたくなったか?
少女
いいえ。違います。
あなたも変わったなーって思っただけです
霧野
なんだその上から目線は!
少女
で、答えは出ましたか?
霧野
…違う問題の答えが出た
少女
違う問題?
霧野
お前がどうして俺とだけ関わるのか、前聞いたろ?
そん時、俺が単純でバカで純粋だからって答えたよな
少女
そうですけど、それが何か?
霧野
あの時はバカにしてるんだと思って、マジムカついてた。
けど、なんであんなに少しの会話でそんなことを自信もって言えたのか、後々不思議になってさ、考えてみたんだよ
少女
…ふーん。で、何かわかりましたか?
霧野
……百円玉。そうだろ?
少女
…………
霧野
お前はことある事に、あのベンチに座って、隣に座ったやつを試してたんだ。
わざと、百円玉を忘れてくことで、そいつの人間性をはかった。
それで、単純でバカで純粋なやつを探してたんだ
少女
………もしそうだとしたら、何故そんなことを?
霧野
さあな。そこまでは考えてなかったわ。
あと、俺みたいなやつがあと5年間現れないってのも、良く分からなかった
少女
…そうですか。まあ、イトにしては上出来です
霧野
だから上から目線をやめろ!
少女
百円玉のことは、ほぼ合ってますよ。
でも、そこから先が解けていたら、これからしようとする話はしなくても良かったんです
霧野
え?じゃあ…
少女
全く違う問題の答えを探していたつもりでも、私の出した問題と繋がっていたということです
霧野
マジか!
少女
はい。成長しましたね
霧野
何度だっていうぞ。上から目線をするな!俺は年上だ!
少女
見かけで人を判断するとはこの事ですね。
私が本当に年下に見えますか?
霧野
だって、16なんだろ?俺、17だし!
少女
不正解
霧野
は?
少女
私は、16歳ではありません
霧野
…いやいや、だって昨日……
少女
「見た目で判断したら」もちろん正解です。
ただ、それ以外で判断するなら違います
霧野
は?
少女
私は、36歳です
霧野
…………………え?
少女
冗談ではありませんよ。正真正銘、私は36年前にらしいこの世に生まれているんです
霧野
………いやいや、だって、どう見たって16…
少女
「見た目は」です
霧野
…やっぱ、わかんねー
少女
私は「不老」という体質なんです。
どんなに歳をとっても、体は何故か16歳の時のまま、止まってしまっているんです
霧野
…………そうなんだ
少女
はい。ただ、あくまで「不老」であり、「不死」ではないなので、死のうと思えば、いつでも…
霧野
ちょ、やめろって!そんな!
少女
まあ、そういうことです
霧野
……あんま信じてないけど、大体わかった。
でも、それじゃあ、存在を隠す理由にはならないだろ
少女
それが、なるんですよ。
世の中には、私のような者を珍しがり、仕組みをどうにかして調べ、自分のモノにしたいと考える人もいるんです
霧野
……は?
少女
現に、「不老の人」が私以外にもいた時には、たくさんの人が攫われ、殺されました
霧野
何でそんなこと…
少女
まあ、お金が欲しいんでしょうね。
あと、臓器なんかは高く売れるのかも知れません
霧野
……………
少女
だから、隠すんです。「自分」という存在がそういうことを引き起こすのなら、そうするしかない。
そのために、私は名前も捨てたし、フードを常にかぶっているようになった
霧野
そんな…ことって……
少女
信じられませんか?
でも、残念ながら事実です
霧野
………許せねえよ、そんなの
少女
そんなふうに思ってくれるだけで、私は心が軽くなります。
全く、世の中あなたみたいな人だけだったら、どんなに良かったでしょう…。
あなたみたいに、単純でバカで純粋な人だけだったら……きっとこんな醜い争いは起きなかったのに
霧野
…………
霧野
……なあ、ひとつ聞いていいか?
少女
はい
霧野
俺みたいのを探してたのは、何でだ?
少女
…人間は、やっぱり1人は寂しいんです。
時には話し相手だって、欲しくなります。
この事実を隠すことが苦しくて、誰かに言いたい時もあります
少女
16歳になって、何年目かに、私はそういう気持ちになりました。
少女
そこで、偶然出会って仲良くなった同い年くらいの人に、打ち明けたんです
少女
そしたらその日の夜、私が帰ったら一緒に暮らしていた私の仲間達が隠れ家のなかで殺されていました
霧野
!!
少女
密告に密告を重ねて、結局私の仲間はみんな殺された…。
人を信じてこの事実を話した私がバカだったんです
霧野
……………
少女
それから1人になって何年か過ごして、また同じような時期が来ました。
そして、あなたと出会った。
何日か会話して、あなただったら大丈夫だと思ったんです
霧野
俺だったら…?
少女
まあ、だから、あなたみたいな人を探していた理由は、簡単に言えば友達が欲しかったからです。
おかしいでしょう?もうすぐ50になるのにこんな子供みたいなこと…
霧野
……いや、別に、そうは思わねーよ。
なんか…その、嬉しいわ。
ありがとな、俺みたいなのを友達に選んでくれて
少女
こちらこそ、受け入れてくれて、ありがとうございます
霧野
……あのさ!もう、敬語やめようぜ!
少女
え?
霧野
お前のことだから、何となくわかる。
敬語使ってたのは、他人に警戒心があったのと、ボロを出さないようにするためだろ?
少女
まあ…はい
霧野
でも、もういいじゃん!どっちもする必要ないだろ?
それに、お前は年上なんだろ、フーカ
少女
……ふふっ、そうでしたね
霧野
だったらいいじゃんよ、もう使わなくて
少女
……ありがとう
霧野
へ?なんで?
少女
何となくで………だ、だよ
霧野
…ぶはっ!一生懸命すぎるだろ!
少女
しょ、しょうがないでしょ!何年間敬語使ってきたとおもってるの!
霧野
怒る時は完璧なんだよな…
少女
でも…久しぶりに心が解放された気がする…
霧野
そりゃあ良かった
少女、少しためらいつつも、フードに手をかける。
少女
あ、あの…
霧野
ん?…え、お前!
少女、フードを脱ぐ。
霧野
……(開いた口が塞がらない)
少女
どう…かな
霧野
…お前、そんな感じだったんだな
少女
なにそのアバウトな感想!
霧野
だって、そうだろ!
少女
全く、もう……
霧野
………
少女
………
2人で顔を見合わせ、笑う。
一ノ瀬