ひとり劇場

蜘蛛の翅

『絲と翅』の番外編。

ちょっと、いいかな。
ずいぶん昔の話なんだけど、
わたしの住んでる集落に
真っ黒だが不思議と美しい蝶と、
堂々とし妖しげな秀麗さをもつ
黒い蜘蛛が現れた。
 
 
怯えるわたしたちに言ったのさ
蜘蛛
『この卵を、育ててくれないか』
・・・吃驚したね。
だけど言われるがままに受取り
育てたんだよ。
丹精こめて、手塩にかけてね。
無事産まれたときは、
美しさにほうと息が漏れたよ。
幼虫だったけど、
ほんとに・・・美しかった。
背に白い宝石みたいな模様があり
瞳は赤くて、
・・・見たこともない・・・
美しい蝶。
だけど。
やはりそいつは蜘蛛の子だった
花の蜜なんかのまない
同族を引っ捕まえ・・・
食べた。
首筋に歯をたてて、ガリガリ
音を立てて喰いちぎる。
このままじゃ、みんなおしまいさ
・・・。
・・・。
でていってもらったよ。
彼は幸せになんてなれない。
だって、彼は
蜘蛛だから。
蜘蛛に成りきれない、蜘蛛。
安らぎを得ることも
居場所を貰うこともない、
ただ一匹の。
不幸な蜘蛛の子。

2  

投稿日時:2016-12-27 10:36
投稿者:水滴
閲覧数:1

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