臆病マスターと寂しがり屋な女の子【02】
ゆかりさんが家に来たら、そんな物語です。
- 臆病マスターと寂しがり屋な女の子【02】
- 僕のいつもの日常はとても単純でつまらなかった。
いつもの時間に起きて、
玄関の鍵を閉めて、
いつもと同じ時間に家を出て、
いつもと同じ電車に乗って、
いつもの学校に着き、
いつもの席に座り、
授業を真面目に聞き、
そして帰る
同じ事の繰り返し、つまらない。
- はぁ…
マスター
- 何か変化が欲しかった。
- でもその変化が恐かった。
だから同じ日々を繰り返し、ただただ時間を浪費していた。
- (さっさと帰ってパソコンでも弄ろう…)
(心の中)
- そうして1日が終わり、また同じ日々を繰り返す。
- (明日、念願のゲームがやっと買える…ここまで長かった…)
(心の中)
- 唯一の楽しみはパソコンのゲーム
これぐらいしか楽しみが無かった。
- だから僕は早く寝て、明日に備えようと急ぎ気味で家に帰った。
- (…自宅前)
- 鍵を開けようとしたが、いつも掛かっている鍵が開いていた。
- (あれ?…おかしいな…
まぁ…そんな時もあるか)
(心の中)
- その時は、(あれなんかあったような…)としか思い出せてなかった。そして…
- ただいまー…
マスター
- 誰もいない部屋に向かって「ただいま」と言う。
返事は返ってこないと分かっているのに。
- (…ガタッ)
- …?誰かいるの?
マスター
- (テッテッテッテッ…)
- 小走りでこっちに駆け寄ってくる音がする。
- …!!!
結月さん
- 彼女は、【結月ゆかり】は僕を出迎えた。
可愛らしく頬を染めながら、両手を胸の前で握っている。
- あー…
マスター
- 困惑する。
- …???
結月さん
- 彼女は何か間違えたのかと思い、自分のおかしい所を探す素振りをする。
体を捻って、何か服についているのか…
顔になにか付いているのか…
- (そうだった…)
(心の中)
- 完璧に忘れていた。
あの朝の出来事を…
- えっと…ただいま?
マスター
- …!
結月さん
- 彼女はビックリしながらも何かを言おうと口を動かす。
しかし小さい口が動くだけで声は出なかった。
- …大丈夫?
マスター
- (声が出ない?…でも、確かあれはボイスロイドだから声は出せるはず…)
(心の中)
- !!!
結月さん
- 細い両腕で、強引に腕を引っ張られる。
- え、な、何?!
マスター
- 〜ッ!!
結月さん
- 手を開けさせ、小さい指で僕の手のひらに文字を書いた。
- か…み…?
マスター
- !!!(コクコク)
結月さん
- どうやら当たりだったのか、彼女は勢いよく頷く。
- 分かったけどちょっと待ってくれる…?
とりあえず家に入りたいんだけど…
マスター
- !
結月さん
- 彼女は我に戻ったのか、申し訳ない顔をして少ししょんぼりしていた。
- あ、いや怒ってないからそんなに落ち込まないで…
とりあえずリビングで話をしよう…いいかな?
マスター
- …(コクン)
結月さん
- 彼女はまだ少し落ち込んでいるのか足取りは少し重かった。
- (夢じゃ…なかったんだ…)
(心の中)
- 靴を脱ごうとしゃがむと、自分の心臓がいつもより鼓動が高鳴っている事に気付いた。
- (…疲れたのかな)
(心の中)
- そんな事を思いながら、リビングに向かう。
- あ…
マスター
- ふと後ろを振り返る。
いつも帰ったら必ず閉める鍵をしていなかった。
- (疲れてるんだな…)
(心の中)
- 溜め息をつきつつ、僕は鍵を閉め
彼女をどうするか考えるのだった。