臆病マスターと寂しがり屋な女の子【01】
ゆかりさんが家に来る、そんな物語です。
- 臆病マスターと寂しがり屋な女の子【01】
- これは臆病な嘘吐きと、
寂しがり屋な女の子の、
ちょっと不思議な物語。
- (…1年前)
- 付き合ってください
?
- …
マスター
- (…え?)
(心の中)
- 私!本当は貴方の事が好きなんです!!!
?
- ごめんちょっと話が急すぎてちょっと…
マスター
- 分かってます…自分勝手なのは充分承知です…
?
- そもそも君って付き合ってる人がいるじゃないか…
マスター
- あの人とはもう別れます!!!
もう…こっちはあの人といると狂いそうなんです!!!
?
- (まぁ、確かにあれは彼氏とは言わないけど…)
(心の中)
- だから…だから私と付き合ってください!
?
- えっと…
マスター
- (…彼女の気持ちを考えると今までとても辛かったのを、堪えて…堪えて…もう限界まで来てしまったんだろう…)
(心の中)
- (それに、何度かその相談で「本当に好きな人を見つけるといい」とか言っちゃたし…それなら…)
(心の中)
- (…俺に出来ることをしよう)
(心の中)
- …もしかしてもう好きな人…いるんですか…?
?
- 声が震え、今にも泣きそうだった
- (これが彼女にとって1番効果的だから)
(心の中)
- それが彼女にとって救いになるなら。
- (僕にしか出来ない事だから)
(心の中)
- 彼女を救いたいと思った。
- 僕で良ければ…お願いします
マスター
- …ッ!!!
?
- 彼女は泣きながら崩れ落ちた
僕はただただ彼女の背中を撫でて
彼女が落ち着くまで傍にいた
- (…現在)
- はー…もうこれだから女子は嫌いなんだ
マスター
- 付き合っていた彼女はもう居なくなっていた
自然消滅という感じであっけなく終わった
1年の間に色々な事があった
そうしているうちに自分も好きになっていた
でもその気持ちは無かったように
全て消えた
- 恋なんてもうしないだろうな…
マスター
- 自分に言い聞かせる
- (どうせ最後は居なくなる)
(心の中)
- 愛なんてものは無いと
- …大学出たら何しよう
マスター
- 独り言を呟き、ただ何も無い未来に溜息をつく
- (寝よう…明日になれば…)
(心の中)
- 自室に入り、ベッドに体を預け目を瞑る
- (あれ…確か明日って何か予定があったような…)
(心の中)
- (…まぁいいか)
(心の中)
- 睡魔が襲う…
- ……
- …ふと目が覚めた
- 白い空間が目の前に広がっている
- (…?夢…?)
(心の中)
- 白以外なにも無い。
どこまでも白が続いている。
- (それにしては結構リアル…)
(心の中)
- 「…ー」
- (誰か呼んでる…?)
(心の中)
- 「………ァー」
- (返事でもしてみるか…)
(心の中)
- 「……タァー…」
- 「……!!!」
マスター
- (あれ…声が出ない…)
(心の中)
- 「……スター…!」
- (あぁ夢だから…)
(心の中)
- 「…マスター…!」
- (もういいや…夢から覚めよう…声も煩くなったし)
(心の中)
- もう1度目を閉じ、何秒か経ってから目を開ける
- そこにはいつもの見慣れた天井があった
- ふぁあ………??
マスター
- 伸びをしようと腕を伸ばす…しかし右腕が上がらない
- (あー…えっと…なんでこんな重いんだ…?昨日何かしたっけ…)
(心の中)
- 暫しの間考えようと目を瞑ると右側から…
- 「…スゥ…スゥ…」
結月さん
- 女の子のような可愛い寝息が聞こえる
- ………えっと…?
マスター
- 開けた窓から風が入ってくる
朝の匂いと甘いシャンプーの香りが…
- (いやこれは夢だ…夢だろ…ほら!さっさと目を開けて夢から覚なきゃ…!!!)
(心の中)
- 目を開ける…
そして恐る恐る右腕を見ると…
- 「…ぅ…んぅ…すぅ…」
結月さん
- 【彼女】が寝ていた。
- え…
マスター
- 腕枕をしていた。
- えっと…とりあえず……
マスター
- こういう時は普段通りの生活をする
そうしたらいつもの生活に戻れる
- ………学校…行こう。うん。僕は何も見てない。
マスター
- そんなうわ言を自分に言い聞かせながら【彼女】を起こさないよう腕を…
- (なんなんだこれ…これって…あれだよね…
あの【結月ゆかり】だよね…
いやでもあんなの知らないぞ…?)
(心の中)
- そんな事を考えつつ…僕は着替えを済ませ、身支度をして逃げるように自室を後にした。