07章「不可思議國ノ少女」3
ストレリチア
- おいシュエット!スカーレットが大怪我ってマジか?
クリムゾン
- うん。処置はしてもらったけど……
シュエット(若)
- スカーレットの寝ている部屋の扉の向こうから、わあわあと色んな人の声が聞こえる。
- オルタンシアはベッドの側で、スカーレットを見守っていた
- スカーレット……
オルタンシア
- みんなあなたを心配して慌てているの。聞こえる?
オルタンシア
- ねぇ、聞こえる?スカーレッ……
オルタンシア
- 妙に静かなスカーレットの様子に、オルタンシアはうろたえた
- え……?
オルタンシア
- オルタンシアは、恐る恐るスカーレットの口元に手をかざす
- な、何てこと……シュエットさん達が目を離した時に……!
オルタンシア
- スカーレット……私のお友達……
オルタンシア
- 呆然としたオルタンシアだったが、
ひとつの考えが浮かんだ
- ううん、待って。……誰もいない時で良かった。こっそり使える……この力を……!
オルタンシア
- ---
- ……あら?
スカーレット
- ここ……知らない場所ね
スカーレット
- 庭園……門?
スカーレット
- あそこにいるのは……パパとママ?
ということは、私は死んだのね
スカーレット
- 無理ないわ。あの傷だもの。残念だけど私はここまでのようね
スカーレット
- 美しい庭園の様子や、足元の花々、小川の澄んだ水を見て、スカーレットはため息をつく
- 悪人が死んで送られてると言うのに、あの世の入り口は綺麗なのね。
スカーレット
- やはり神はいないわ。分けるべき人間も一緒くたなんて。管理されてないのね
スカーレット
- 門の入口へ進もうとしたスカーレットの手を、後ろからオルタンシアが掴んだ
- えっ?
スカーレット
- ……!!
オルタンシア
- オルタンシアは必死に口をぱくぱくして何か喋っているようだ。
しかし、声は聞こえず、何を言っているかわからない。
- オルタンシア?どうしたの?
スカーレット
- オルタンシアに腕を引っ張られると、スカーレットはそのまま彼女の方へ引き込まれた
- きゃっ!
スカーレット
- ---
- スカーレット……!
オルタンシア
- ……?
スカーレット
- オルタンシア……
スカーレット
- 良かった。
死んでしまったのかと思ったわ
オルタンシア
- 死んだと思ったんだけど……
スカーレット
- パパとママが見えるところに行ったの。
けれど、あなたが必死な顔で私の腕を掴んで、引っ張られるままになって、気付いたらここに
スカーレット
- ……あなた、私を生き返らせたの?
異能を使って?
スカーレット
- !!
オルタンシア
- どこで聞いたの?その話……
オルタンシア
- ヒエラが言ってたの。噂は本当だったのね
スカーレット
- 内緒にしてちょうだい……私、なぜ自分にこんな力があるのか、さっぱり分からないの
オルタンシア
- 混乱を招く力だから、使うまいと思ってた。けれど、あなたの死を目の前にして、使ってしまった……
オルタンシア
- いいえ、あなたにまた会えて良かった。
スカーレット
- ここからの人生はあなたに貰った命ね、オルタンシア
スカーレット
- そんな……この力で生き返した人間がどのくらい生きられるか分からないわ……。長くはもたないかも知れない……
オルタンシア
- 猫に使った時は、その猫はどこかへ行ってしまったし、草花に使う時は、役目を終えたら枯らしていたから……
オルタンシア
- いつ終わりが来たとしても仕方ないわ。本来、ここから先はオルタンシアかいなかったら、存在しなかった時間よ
スカーレット
- 私の命はオルタンシアのために使う。役目を終えたと思ったら、花と同じように枯らしてちょうだい
スカーレット
- できないわ、そんなこと……
オルタンシア
- あなたから賜る死なら受け入れられる
スカーレット
- 恩人のために何もしないなんて、ストレリチア構成員の心得に反するもの
スカーレット
- そんなに……
オルタンシア
- あれ?スカーレット、気がついたのかい?
シュエット(若)
- おっ?どういうこった?
クリムゾン
- !!
オルタンシア
- あなた達のいない間、オルタンシアが治癒魔法をかけてくれたみたい。死の淵から這い上がったわ
スカーレット
- 本当に君が死んでしまうのではないかと心配したんだ。良かったよ
シュエット(若)
- 奇跡だな……
クリムゾン
- ふふ。そうね、奇跡だわ
スカーレット
- ねえシュエット、私、オルタンシアへ恩を返したいの。オルタンシアの護衛に任命して。
スカーレット
- そんな!危ないわ!
オルタンシア
- どうか止めないで
スカーレット
- オルタンシアのこと、命をかけて守りたい。誰かがやらなくちゃいけないなら、私にやらせて欲しい
スカーレット
- 急に何を言い出すかと思えば
シュエット(若)
- ピエリスがいない今、護衛の立候補はありがたいけど……君をあまり危険な目に遭わすと、総統も心配する
シュエット(若)
- 君を娘のように思っているから。
忘れないであげてくれ
シュエット(若)
- もちろん。忘れたことはないわ
スカーレット
- けれど、娘可愛さに危険な任務を外れろなんて、ストレリチアの総統なら言わないはずよ
スカーレット
- あなた達とは性別が違うだけで、私もストレリチアの構成員。然るべき時に命を張る覚悟はあるわ
スカーレット
- ……そこまで言うなら、お願いするよ。
シュエット(若)
- 良いのか
クリムゾン
- うん。勇気ある申し出だからね
シュエット(若)
- 体が戻ってから、きちんと任命しよう。
今はしっかり休むこと。いいね?
シュエット(若)
- ええ。ありがとう
スカーレット