わお
やめて
- 「好きなタイプは?」
〇〇
- テレビの中でそう聞かれた多くの人がこう答える
〇〇
- 「優しい人がいいですね」
〇〇
〇〇
- 周りの私に対する評価は「優しい人」だった
〇〇
- 私自身「優しい人」でいる事が私らしさだった
〇〇
- そしてなにより
〇〇
- 誇らしかった
〇〇
〇〇
- そんなある日突然君は私にこう告げた
〇〇
- 理佐の優しいって自分のためだよね
由依
- 私は彼女の言葉の意味が理解できなかった
由依
- 自分のため?
由依
- 「そんな事ない、違うよ」
由依
- そう反論したいが、私の目に映る君はすでに背を見せていた
由依
由依
- 彼女の言葉の真意を知るべく
由依
- 単純にも「優しさ」という言葉で辞書を引いてみた
由依
- 「思いやり」
「情がこまやか」
「穏和」
由依
- 答えは出たがこれも理解が難しい
由依
- 結局優しいって何?
由依
- 彼女の言葉ひとつで私の存在意義を否定されたようだ
由依
- 私の中の私が崩れて消えてしまう
由依
由依
- それから毎日暇さえあれば調べた
理佐
- そして少し分かった事がある
理佐
- 「優しい人はつまらない」
理佐
- 「優しいだけじゃ物足りない」
理佐
- 「優しさは気弱さの言い訳」
理佐
- 長所が「優しい」の私はこれを知りたくなかった
理佐
- 意味はわかる、だけど優しい以外にどうすればいい
理佐
- それくらい「優しさ」は私の存在意義だった
理佐
- 私を形成しているものは本当にそれだけだった
理佐
- ははっ…
理佐
- 私って「優しい」しかないじゃん…
理佐
理佐
- そんな失望の中、再び君と出会った
由依
- 声をかけずにはいられなかった
理佐
- ねぇ!
理佐
- !
由依
- びっくりした
由依
- 何?
由依
- 優しい私はダメなの?
理佐
- ……
由依
- 何その質問
由依
- ダメじゃない
由依
- そう答えれば満足する?
由依
- ……
理佐
- …理佐はさ、弱いよ
由依
- …どう言う意味?
理佐
- 彼女の言葉はいちいち難しい
理佐
- 優しい事は悪い事じゃない
由依
- だけど理佐は
由依
- 人に優しくすればその分優しさを返してもらえる
由依
- そう思ってる
由依
- そうやって返してもらえる事で自分の存在を確かめてるんだよ
由依
- 彼女は続ける
理佐
- 理佐は勘違いしてる
由依
- 優しいは貸すんじゃなくてあげなきゃ
由依
- っ…!
理佐
- 最後の言葉でようやく全て理解できた
理佐
- 偽善
理佐
- 今の私には
理佐
- そんな言葉が相応しい
理佐
理佐
- 嫌われたくない
理佐
- 周りからの評価
理佐
- そんな事ばかり考えていた気がする
理佐
- ………
理佐
理佐
- この日から私は変わった
理佐
- 不器用な私は
理佐
- もちろん悪い方向へ
理佐
理佐
- 人に関心を持たなくなった
理佐
- そう
理佐
- 私は逃げた
理佐
- こうする事で傷付く事はない
理佐
- 結果は目に見えていた
理佐
- 私の周りには誰も残らなかった
理佐
- ・
・
・
・
理佐
- 1人を除いては
理佐
- ただいま
理佐
- おかえり
由依