5章「君の影追う香りの道筋」2
- ここも違ったなぁ
ディアスシア
- 次で最後の場所ネ
ルピナス
- ここがダメだったら、自分の知る範囲にはいないなぁ。困ったな
ディアスシア
- 諦めちゃダメ!
ルピナス
- ところで、ディアはどうして毒魔法扱えそうな人の目星がついたネ?
ルピナス
- 商業部の扱うものの中には毒薬もあってね。生産元を辿れば少なくとも情報くらいは取れると思ったんだ
ディアスシア
- ストレリチアに毒薬を提供しつつ、喧嘩も売る。そんな変な人居るのかな〜とは思ったんだけどね……
ディアスシア
- 普通の人も買える毒薬しか買ってない店もあるし、そういうの買う時ってカタギのふりして買い物するから、参考になるかどうか
ディアスシア
- 普通の人が買う毒薬ってなぁに?
ルピナス
- 虫退治用とか、家畜を襲う獣退治の
毒餌によく使われるやつ
ディアスシア
- 薬師巡りついでにいくつか薬を買っておいたから、何かの時に使おう
ディアスシア
- ---
- 着いたネ!
ルピナス
- さてと、ここが最後だ
ディアスシア
- ごめんくださーい
ディアスシア
- いらっしゃい
カトラン
- この薬の追加を貰いたいんですけど
ディアスシア
- これ?随分昔に作ったものだ……確認してこよう
カトラン
- くんくん……
ルピナス
- ここ、いい匂い漂ってくるネ
ルピナス
- あっちから匂いがするネ!
部屋の中はどうなってるの?
ちょっとだけ見せて!
ルピナス
- 危ない物があるから、子どもは入っちゃダメだよ
カトラン
- ミュゲ、この薬なんだけど
カトラン
- はい、確認してきます
ミュゲ
- ---店の裏方---
- お客さん?
ヒエラ
- うん
ミュゲ
- 誰だろ……
ヒエラ
- (小さいな。子ども?男の方は声変わり済みだし、ギリ子どもってとこか?)
ヒエラ
- (怪しいところあるかな……?)
ヒエラ
- どうしたの?
ミュゲ
- お客さんを見てた
ヒエラ
- お客さんをじろじろ見ちゃダメ
ミュゲ
- うちにとって大事な場所なんだから、警備くらいさせてよ〜
ヒエラ
- ほどほどにね
ミュゲ
- ねえヒエラ、お師匠さまの新しい魔法……完成したのかな
ミュゲ
- もうちょっとって言ってたかな。
カトランさん、いつ取り組んでくれるんだか
ヒエラ
- 夜かな。暗くなってからの方が集中できるみたい
ミュゲ
- もうう〜〜自由人には敵わないや
ヒエラ
- ミュゲのくれた毒霧玉の方が今のところ役に立ってるよ。おかげで足の怪我だけで済んだから
ヒエラ
- あれ、役に立ったの?
ミュゲ
- 敵が手強くてさ、あれで動きが鈍らなかったら死んでたかも
ヒエラ
- あれは魔物の動きを鈍らせて、隙を見て逃げるための物
ミュゲ
- 人に使ったら、苦しんだんじゃ……
ミュゲ
- もがく前に殺したから平気
ヒエラ
- ヒエラの仕事は物騒……
ミュゲ
- ……やっぱりこれ、在庫ない
ミュゲ
- ------
- (毒霧玉……?足の怪我って、ピエリスさんが死ぬ前に負わせたって言ってたもの……?)
ルピナス
- 奥にお兄さんがいるネ!店員さん?
ルピナス
- ------
- (え、姿見えちゃった?まさかね……)
ヒエラ
- 私のお友達だよ。
遠くから遊びに来てくれたんだ
カトラン
- ふぅん……遊びに来たにしては緊張してるみたいヨ
ルピナス
- 危ない物があるからじゃないかな?薬屋には触ると本当に危ない薬品も置いてるからね
カトラン
- お師匠さま、このお薬の在庫は無いです
ミュゲ
- !
ルピナス
- やっぱり?今あんまり作ってない物だからな
カトラン
- 材料はあるから、この瓶の分なら今から作れるよ。ちょっと時間かかっちゃうけど、待てる?
カトラン
- お願いします。外で待ってます
ディアスシア
- 行こう
ディアスシア
- うん!
ルピナス
- ---
- あの人たち、こっちを子どもだと思ってるな……
ディアスシア
- あたしもディアもミニサイズだから……
ルピナス
- ディアスシア=160cm
ルピナス=150cm
- 子どもだと思われてるならチャンスだ。子どもムーブでじゃんじゃん絡もう。
何か聞き出せるかも
ディアスシア
- そうネ!フード付きのポンチョ着てて良かったネ。あの人たち、あたしの耳と尾っぽに気付いてないネ
ルピナス
- ディア、あのね、紫髪の女の子から、スズランの香りがしたのヨ
ルピナス
- 本当?同じ匂い?
ディアスシア
- うん。こっちから匂いが流れてくるネ。窓から中が見えるかしら?
ルピナス
- 覗いてみよ……
ディアスシア
- !!!
ルピナス
- スズランいっぱい咲いてるネ
ルピナス
- スズランは毒草なんだって。
毒薬を作る時に使ってるのかな?
ディアスシア
- それに、あの男の人、ヒエラって呼ばれてた。人違いじゃなければ、あの人がピエリスさんを……
ルピナス
- ルリジサさんが言ってた刺客?
ディアスシア
- うん。きっとそうヨ
ルピナス
- 2人ともぉ、危ないから覗いちゃダメだよ〜
ヒエラ
- お兄さん、あの花綺麗ヨ!
どうしてたくさん咲いてるの?
ルピナス
- 知らないよ〜。
あのお姉さんに聞きな
ヒエラ
- ?
ミュゲ
- お姉さん!この花なぁに?
どうしてたくさん植えてるの?
ルピナス
- これはスズラン。
白くて可愛くて……好きだから。
好きな物に囲まれていたいから
ミュゲ
- 何に使うの?食べられるの?
ルピナス
- 危ないから口にしちゃダメ
ミュゲ
- 毒草だから
ミュゲ
- こんなに可愛いのに毒なの?
ルピナス
- 身近な植物にも、毒がある
ミュゲ
- 植物に触る時は気をつけて
ミュゲ
- はい、質問タイムはおしまーい。
窓閉めちゃうからね!
ヒエラ
- えー!
ルピナス
- 閉まっちゃった
ディアスシア
- あたしの聴力ナメないでほしいネ
ルピナス
- 聞こえるの?
ディアスシア
- 狼は耳も良いのヨ
ルピナス
- ---
- 騒がしかったね。何だったの?
カトラン
- 開いてた窓からあの子たちが覗いてて。話しかけられました
ミュゲ
- あの子、スズランが好きみたい。
とても興味を持ってました
ミュゲ
- ああ。可愛い花だものね
カトラン
- カトおじ〜早く魔法の指導書書いてくださいよ〜
ヒエラ
- その呼び方やめなさいって。まったく最近の若者は……
カトラン
- 早くやってくれないから、さん付けからカトおじに格下げしましたぁ
ヒエラ
- 考えてはあるんだ。あとは書き記すだけだよ。店閉めたらやるから
カトラン
- (やれやれ、早く取り組んでほしいな。本当に夜まで待たないとやらないのか……)
ヒエラ
- (この前、屋敷にストレリチアのスパイが入ってたから、ここがバレてる可能性もあるし……いざとなったらここを脱出して、2人をウェネーヌム卿の屋敷まで連れてかないと)
ヒエラ
- (薬だけ売って帰ってもらうか……?いや、この2人を店頭に出すのはリスクが高い……)
ヒエラ
- お師匠さま……
ミュゲ
- 薬、できました
ミュゲ
- ありがとうね
カトラン
- あの〜……会計やらせてもらえます?
ヒエラ
- どうしたの急に
カトラン
- あの2人やっぱ怪しい
ヒエラ
- そうか。用心するに越したことはない。会計、お願いね
カトラン
- はぁい
ヒエラ
- ---
- お待たせしましたぁ
ヒエラ
- お友達の人!
ルピナス
- 1500ディラでーす
ヒエラ
- どうもです
ディアスシア
- ヒエラさん!聞きたいことがあるネ!
ルピナス
- 毒霧玉ってスズランでできてるの?
ルピナス
- え?知らないよ
ヒエラ
- 大事な実験場の警備して、師匠さんにハッパかけに来たの?
ルピナス
- はい?何の話?
ヒエラ
- お兄さんからは嘘つきのニオイがするネ
ルピナス
- 嘘ついちゃダメなのよ。
オオカミは知ってるネ
ルピナス
- ルピナスはポンチョを脱ぎ捨てた。
オオカミの耳と尻尾があらわになる。
- ルピナスは飛びかかったが、ヒエラは狭い店内で器用に避け、反撃する
- 獣人、ストレリチアにいたんだ。
珍しいね
ヒエラ
- 次からはあたしを恐れなさいネ
ルピナス
- (どうりで、物陰に隠れて見えなかったはずの俺を感知したわけだ。人間よりも鼻がいい、恐らく聴力も……)
ヒエラ
- (ミュゲが呼んだあの1回も聞き取られてたんだな)
ヒエラ
- 誰も教えてないのに、どうして俺の名前を知ってるのか理解ができたよ
ヒエラ
- 毒魔法の研究所、見つけたネ!
ルピナス
- ご苦労さん!!!
ヒエラ
- ヒエラは花のいけてあった花瓶の水を、ルピナスの顔面にぶちまけた
- きゃん!
ルピナス
- 逃げるぞ!!
ヒエラ
- え、え?
ミュゲ
- こっちだ!
カトラン
- ヒエラたちは裏口から飛び出していった
- 待て!
ディアスシア
- ルピナス、大丈夫?
ディアスシア
- ペッペッ……大丈夫ヨ!
ルピナス
- あいつら追いかけるネ!
ルピナス