走れうどん屋
俺が出前に行った話
- 店長は激怒した。電話相手のお客に、必ずしもこのうどんを届けてやると誓った。
- といっても、うどんを届けるのは俺なんだが
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- 何ぃ!?「出前を頼みたい」だと!?
店長
- うちは出前をやってなんかない…て、あ!切られた!
店長
- さっきから店長がうるさいがあえて無視をする。
- おい、バイト
店長
- げ、呼ばれた。
- …なんすか、店長
俺
- なんすかじゃねえ。お前暇そうだろ。出前に行け
店長
- えぇ?ここの店って出前やってないんですよね?
俺
- 確かにそうなんだが、断りきれなくてな
店長
- なんでまた
俺
- どうやら客は老婆でな。耳が遠いらしくこっちの話がよく聞こてないらしいんだ
店長
- それなのによく電話してきましたね…その人
俺
- ああ、全くだ
店長
- そんなわけで、バイト。出前に行ってこい
店長
- ええ、嫌ですよ。めんどくさい
俺
- 行ったら給料2倍な
店長
- それでは出前に行ってきます。
俺
- 俺が早足に店から出ると
- おい待て。出前行くってのに出前の品持っていかなくてどうするんだよ
店長
- ♦︎ ♦︎ ♦︎
- 給料2倍に釣られて店出たのはいいけど、目的の住所ここからだと遠いな…
俺
- …ん?遠くがなんだか騒がしいな。行ってみよう
俺
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- なんで唐揚げ弁当がないんだ!
お客
- !?
俺
- だから…!先ほどお伝えしたように唐揚げ弁当は売り切れに…
店員
- ええい!そんなくだらない理由で諦めてたまるか!
お客
- あのー
俺
- なんだ!
お客
- 唐揚げ弁当なら近くのロー⚫︎ンに売っていますよ
俺
- 何!それは本当か!そうならさっさと言わんかい
お客
- そう言うや否や、お客はロー⚫︎ンに向かって走って行った
- 店員に何か言われた気がするけどとりあえず無視した。ごめんなさい
- ♦︎ ♦︎ ♦︎
- あれぇ?目的の住所ここら辺のはずなんだけど
俺
- にしてもここの坂、急だなぁ…もう少しなめらかにならないのかよ
俺
- すると突然、向こうの方から
- 拾ってくださーい!
主婦
- なんだなんだ!!???
俺
- 大量のミカンが坂を転がってこちらに向かって来た
- うわー!!!
俺
- 大量のミカンに足を取られ、俺もミカンと一緒に坂を転がってしまった
- それが不幸となり、手に持ってる岡持ち(うどんを入れてる箱)が宙に舞った
- マズイ…
俺
- 視界がボヤけ、走馬灯が見えてきた
- ・
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- ・
- えええ!!!???目玉焼きにはソースだるぅぅぅううぉぉおお????
幼児期の俺
- ソースぅぅううう?????はっ!!!!!これだから野良猫は!!!
我が家のまゆちゃん
- なんだとぉぉおおお!!!!!?????💢💢💢
幼児期の俺
- ・
- ・
- ・
- ・
- ・
- …いや、我が家のまゆちゃんって誰だよ。俺の人生の中で出てきたの今回が初めてだよ
俺
- 大丈夫ですか…?
主婦
- え?あ、はい。大丈夫です
俺
- そうですか、それはよかったです。あ、これ。落し物です
主婦
- そう言って主婦が俺に岡持ちを渡した
- あ!これ、ありがとうございます!
俺
- 確認したところ、どうやら中身は無事なようだ
- よかったぁ…給料半額は免れた
俺
- 前に一度だけ、給料を半額にされたことがある。その時は本当に泣きそうだった
- 泣いてないけど
- それでは、お気をつけて
主婦
- はい
俺
- …結局、あのミカンは何だったのか?
- ♦︎ ♦︎ ♦︎
- 着いたっ!
俺
- 立派にそびえるその洋館は、不気味な雰囲気を醸し出してた
- あのう、ごめんくださーい。出前に来ましたー
俺
- はーい、入ってどうぞー
出前を頼んだお客
- あれ?耳の遠い老婆じゃないだと?店長の話じゃ
- 耳の遠い老婆が出前を…
店長
- とか何とか言ってたはず。一体あれは…?
- おやおや、その顔は、「何で耳の遠い老婆じゃないんだ?店長の話とまったく違うじゃないか!」と言いたげな顔だな
出前を頼んだお客
- 何故ばれた!
俺
- ははっ、わかるとも。何故なら、私は耳の遠い老婆じゃないんだからな
出前を頼んだお客
- 老婆じゃないんだからな!!!
出前を頼んだお客
- 何故そこを強調する!
俺
- ♦︎ ♦︎ ♦︎
- …なるほど。つまり、耳の遠いふりをして、うちに出前を頼んだわけですね?
俺
- ええ、その通り。そうでもしなきゃ出前はできなさそうだったからな
出前を頼んだお客
- なんとも傍迷惑な話だ
- まあよいでしょう。でも、次からはこういうのなしですからね
俺
- はーい
出前を頼んだお客
- えーと、1300円になります
俺
- えーと、はい。これ
出前を頼んだお客
- そう言って手渡されたお金は合計金額より少し多かった
- …あれ?お客さん。このお金少し多いみたいですよ?
俺
- ああ、多い分はここまで来たあんたへのお礼料だよ
出前を頼んだお客
- マジすか!あざまーす!
俺
- やった!給料2倍だ!!
- ♦︎ ♦︎ ♦︎
- …ふーん。なるほど。そのお客さんは耳の遠い老婆のふりをしてたのか
店長
- 老婆の真似をしていたんですよ!!
俺
- 何故そこを強調する!
店長
- ガラガラ、と店の扉が開く音がした
- いらっしゃいませー!
店長
- いらっしゃいませー!
俺
- 今日もうどん屋は大繁盛です。
- おしまい