2章「愚者は酔狂を求めるか」5
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- 2章「愚者は酔狂を求めるか」5
- ストレリチア アジト
- そういや、殺された構成員って何者なんです?
こんな大きな抗争の種になるんだから、そこらのチンピラじゃないんでしょ?
ジェンシャン
- 俺たちのような末端の戦闘員には知らされていないな
ヘデラ
- クリムゾン様知ってる?
ジェンシャン
- 俺も詳しくは……
クリムゾン
- 命懸けで戦わすんだから、詳細くらい教えてくれてもいいよなぁ
カメリア
- それは私から説明しましょう
ルリジサ
- えーと、どちら様……?
ジェンシャン
- ルリジサさん。お久しぶりです
カメリア
- 久しぶり、カメリア
ルリジサ
- 私はルリジサ。情報部で諜報をしているの。カリンカの母よ
ルリジサ
- 殺された構成員の名はピエリス。
戦闘部で、幹部の用心棒をしている男だったわ
ルリジサ
- あいつ、最近見ないと思ってたら死んでたのか!
クリムゾン
- そんな!腕の立つ人だったのに……
カメリア
- 有名人なんですねぇ
俺は知らないけど
ジェンシャン
- ふむ……
ヘデラ
- 俺らとは別の仕事してる奴だからな。
総統とかシュエットの護衛してたんだ
クリムゾン
- 親父とも仲良くて、俺とシュエットもガキの頃から随分世話になったよ
クリムゾン
- 試合してもらったことあるけど、俺は結局、ピエリスには1回も勝てなかった……
クリムゾン
- へ〜。クリムゾン様だってまあまあ強いはずなのに?
ジェンシャン
- 『まあまあ』は余計だ!
クリムゾン
- 噂では、戦闘部の次期頭になるんじゃないかって見込まれてたくらい強い人だぞ
カメリア
- そんなに
ジェンシャン
- 長年用心棒を務めたピエリスがやられたんだもの。発表は慎重にと言われたし、遺体も即回収されたから、みんな知らなかったのよ
ルリジサ
- それで何だかわかんないうちに、夜警に来いってなったわけか
ジェンシャン
- 総統の許可が出たから、あなた達にも真実を知らせるわ
ルリジサ
- ……ピエリスが死んだ日、町に侵入者が入ったと情報があってね、シュエットのすぐそこまで敵が迫っていたのよ
ルリジサ
- 〜回想〜
- どうしたんだい、そんなに急がせて……
シュエット(若)
- 若、こちらへ!敵が迫っています!
ピエリス
- 奴の狙いは若です。
俺が出て奴を仕留めます!
ピエリス
- 若はここに隠れて、俺にお任せを!
ピエリス
- わかったよ。だけど、相手の正体が掴めてないんだろう?出て行くのは危険だ
シュエット(若)
- 危険なんていつものことですよ!
ピエリス
- そうだ、若、外套を借りても良いですか?
ピエリス
- 良いけど、どうするつもりだい?
シュエット(若)
- 俺が若のふりをすれば、奴をおびき寄せられます
ピエリス
- ……そんなことをしたら、殺されてしまうかも知れないよ
シュエット(若)
- ストレリチアの戦闘員になった時点で、死なんて怖くありません。あなたを守れなかったら、俺は総統に顔向けできない。
ピエリス
- 外套お借りします!
汚したらすみません!
ピエリス
- 待っ……ピエリス!!
シュエット(若)
- 〜少し経った後、屋外〜
- あら、誰か倒れて……?
ルリジサ
- ルリジサさん……
ピエリス
- ピエリス!?ピエリスじゃない!
誰にやられたの!?
ルリジサ
- 知らない奴だった……
ピエリス
- 鷹と幻術を……使ってきた男だ……
ピエリス
- 足に傷を負わせたら、退いていった……
恐らく、もう町の外に……
ピエリス
- そう……。
それにしてもひどい傷。これではもう……
ルリジサ
- 分かってます。俺はもう……助からない……
若に伝えてください。侵入者は退却しました、と……
ピエリス
- 〜〜〜
- あいつが殺されちまう程の実力者が攻めてきたってことか……
クリムゾン
- あの後、情報部で特務チームを組んで、容疑者を調べ上げたの
『鷹使いのヒエラ』と呼ばれる男ね
ルリジサ
- 鷹と幻術を使って、伝令や諜報をしていた人みたい
ルリジサ
- 諜報やってたんなら、気配を消して忍び寄るのも得意かも知れませんね
カメリア
- 若が報復を命じるのも無理ないわ。
ピエリスはストレリチアの戦闘部を引っ張っていくべきだった、大切なメンバーだもの。
ルリジサ
- そして、ヒエラが今現在協力している者の名……
ルリジサ
- ウェネーヌム卿……
ルリジサ
- 卿?貴族か?
クリムゾン
- 貴族だな。今の当主はヴィローサ・ウェネーヌム。ヘデラくらいの年の男だよ
カメリア
- そいつが今度の襲撃作戦で動くかもしれないってこと?
ジェンシャン
- バグダンジュ社に大きな出資をしてるのは確かよ。投資家の貴族がストレリチアに何の用か知らないけど
ルリジサ
- ま、それも時期に分かるはずよ。
今、ウェネーヌム卿の屋敷に潜入調査をかけているから
ルリジサ
- アーテルなら上手くやってくれるはずよ
ルリジサ
- えっ?!今アーテルちゃん潜入やってるんです?!
ジェンシャン
- そうだけど、何か問題でも?
ルリジサ
- や、普通に危ないのと、最近俺の家に来ないから不思議だなって思って
ジェンシャン
- え……
ヘデラ
- あら、あなた達そんな関係だったの?
ルリジサ
- なんか好かれちゃったみたいで、ある日家帰ったら居たんだよね
ジェンシャン
- 鍵渡してたのか?
カメリア
- あの時はまだ渡してなかったなぁ
ジェンシャン
- 怖……
クリムゾン
- 何故に好かれているんだ?
ヘデラ
- それがね……
ジェンシャン
- 〜回想〜
- ジェンシャンさん、私の危機を救ってくれたんですよ。きっと覚えてないでしょうけど
アーテル
- うん、全然覚えてないや
ジェンシャン
- ジェンシャンさんと出会って間もない頃でした。私は変装して、往来を歩いていました。
アーテル
- その時は男に絡まれていたんです。私は弱い一般人のふりをしていたので、往来の中でその方をやっつけるわけにもいかず……
アーテル
- 困っていたところを、ジェンシャンさんは彼氏のふりをして、男をあしらって撒いてくれました。あの時、とっても助かったんですよ
アーテル
- 〜〜〜
- ってことらしい
ジェンシャン
- そ、そうなの……。
あの子、迷惑かけてない?
ルリジサ
- 全然。俺女の子大好きだもん。
アーテルちゃん可愛いしいい匂いするし、料理は美味しいし助かってる
ジェンシャン
- 大丈夫なら良かった
ルリジサ
- あの子ちょっと重いと言うか……
ルリジサ
- えっ?
ジェンシャン
- いえ、何でもないわ
ルリジサ
- ともかく、アーテルの続報を待ちましょう
ルリジサ
- ピエリスの仇も取らないといけないしな
クリムゾン
- あの人が死んだまま黙ってられません。あたしも戦います!
カメリア
- バグダンジュ社への襲撃も近日に迫ってるわ。武運を祈ってるからね
ルリジサ
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- ジェンシャン、アーテル殿に好かれているなら、不在のうちに花街に行くのは控えたほうが良いんじゃないか?
ヘデラ
- え?気にしないで普通に行ってた
ジェンシャン
- 通常運転すぎる……
クリムゾン
- アーテルが帰ってきたら知らないぞ
カメリア
- 付き合おうとかってやり取りしたことないからなー。ノーカウントっしょ
ジェンシャン
- やっぱお前1回刺された方がいいな
カメリア
- アーテルちゃんじゃない子になら刺されかけたことあるよ
ジェンシャン
- 手遅れだったか
ヘデラ
- バグダンジュ社の襲撃までに刺されんなよ?もうすぐだからな?
クリムゾン
- 気を付けまーす
ジェンシャン