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ひとり劇場

拘束された男

友人へ捧ぐ

遮光された暗い部屋に、照明の明かりが一つ。橙色の光が室内を照らしている。
コンクリートの床に置かれているのは古びた簡易ベッドと、木製の机と椅子。
じめっとした空気感が覆う、外界から遮断された部屋は、薄暗く、おどろおどろしい。剥き出しのコンクリートの壁には、どす黒い赤茶げた痕が所々付着し、汚れていた。

そこには男が一人、椅子に腰かけていた。

体格の良い髭を生やした壮年期の男、自ら腰を掛けているのではなく、強制的に掛けさせられている。

椅子に縛り付けるように縄で拘束され、両手は後ろに結び付けられていて、監禁されているかのようだった。

掘りの深い顔立ちをしている顔は、目隠しによって隠されてしまっていた。意識があるためか、耳を澄ませて周りの様子を伺っている。

けれどそこに人の気配はなかった
ここは、…?なんも見えねえな…、…くそ、動かねえ(ふ、と意識が戻ってくる、今まで寝ていたのか、と周りを見渡そうとするものの、暗闇で違和感を感じた。頭がぼんやりとしていて、状況を把握するまで時間が掛かる。ぐ、と体を起こそうとする、が、上半身、手が動かせない。足も固定されている、目隠しにより視界が塞がれ、拘束されているのが分かりガタガタと椅子を揺らし力任せに立ち上がろうとするがビクともしない。硬く拘束されているようだ。眉を寄せて状況を振り返る)何なんだ、これは…昨日は、恋人と飯食って寝て……そのあとは…
そのあとは…、…つか、京司はどこだ、っ、………(先日の記憶を辿り、昨日までの平和な日常を思い出す。しかし寝た後の記憶が無い、視界が塞がれ自分がどこにいるのかさえ分からない。ただ理解できるのは誰かから拘束されていること、それと昨日まで一緒にいた恋人が居ないこと。心配になり、若干声を荒げた。早くここから抜け出さなければ、と。恋人の安否が気になり力任せに縄を解こうとするが硬い、ギシ、と軋む音がするだけで縄が擦れて痛みだけが残る。その瞬間、カツ、と硬質的な靴音が聞こえてきた。遠いところから徐々に音が此方に近づいてきている。神経を研ぎ澄ませ低い声で尋ねた)………誰だ、
黒滝
(黒シャツに赤いネクタイ、黒いスーツと靴を履いて、コンクリートの床を踏み鳴らして歩く。空気が淀み、どんよりとした廊下から通じる部屋の扉を開いた。そこにはガタイの良い知り合いの男が一人、拘束され椅子に座っていた。しっかりと椅子に固定されているのを見て口端が上がる。取り合えずは歓迎をしよう、笑顔で挨拶をして、存在を主張する)────おやおや、縞さん、久しぶりですね、こうして対面してお会いするのは。……いかがですか、この部屋、血生臭くて汚かったので清掃させたんですよ、貴方のために…と、見えないか。…あと、俺ですよ、俺、わかります?(自分の声で分かるだろうと縞へと質問を投げかけ、緩慢に歩みを進めた。目隠しをした男を見下ろすようにして傍に立つ)
(近寄ってきた男の声、それは知ったものだった、昔の同僚でもあり、恋人の友人でもある男、名前は『黒滝』。近くから香る香水の匂いにも覚えがあったため、若干警戒心が解け、これは恋人を含んだ悪戯なのかと予測して息を吐いた。手の込んだものだと感心さえ覚えながらも、数年の付き合いで信頼もある相手の声が聞こえてきたことで先ほどまでの危機感が薄れて、呆れたように声を出す)……黒滝、お前か…。ふざけたこと言ってねえで、これは一体どういう事か説明しろ、…悪戯にもほどがあるぞ、で、コレ外せ
黒滝
御名答、よく分かりましたね。…悪戯、ではないんですよねえ。ご丁寧に説明さしあげましょうか、昔…同僚だったよしみです。…そうですねえ、簡単に言いますと───(当たり、と満足げにした後、肩をひょいと上げて、前後の話をゆったりとした声で話し始めた。簡単に、と言いながら懇切丁寧に説明をする)
黒滝
黒滝は言った。
恋人である京司が 、友人に売られてしまった、と。

本人の知らぬ所で、莫大な借金の保証人にされており、払えるはずのない金額から、友人自身は既に身を売ったらしい。

だが友人がした借金は、友人の体でも足りないらしく、保証人になっている京司に鉢が回ってきたという。

---to be continued

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投稿日時:2022-04-11 16:05
投稿者:くらら
閲覧数:82

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