「山田太郎では無い誰か」と世界滅亡の関連性について説明しないことはあり得ません(その2)
どうも、もうこはんです!世界観や用語説明を兼ねた短編、第2弾となります!今回はこの世界における「能力」の立ち位置と、主要人物「イド」への言及となります
- 「山田太郎では無い誰か」と世界滅亡の関連性について説明しないことはあり得ません(その2)
膰
- 朝食を食べ終えた一同。当然のように対話は継続される。
システム
- それで、説明の続きを願いたいのだが
山々 空々
- 勉強熱心ですね、急に日本に来たのですから、休んでも構いませんよ?
コウノトリ
- それは出来ない。私の無知で世界が滅んでは困る
山々 空々
- 自意識過剰、とは言えないのが困ったところだね。すまないが、我が愛弟子の為に説明を続けて頂けないだろうか?
墨石 亜蘭
- 貴方がちゃんと教えていれば良かっただけの話なんですのよ、映画馬鹿。えっと、何処まで話しましたっけ?
ヴ・ダ
- ……そ、存在覚醒者について、だったよ。人は何故覚醒し、そして何故発狂するのか、という所までだ
墨石 亜蘭
- 流石は映画馬鹿、あらすじはお手の物ですね。では、次は存在覚醒によって得られる「能力」の話をしましょうか
膰
- それならば感覚的に理解している。私で言うところの「解脱」にあたる物の事だろうか
山々 空々
- うーーーーーーん
センニン
- ……違うのか?
山々 空々
- いや合っとるよ?ただのう、山々、お主ちょっと例外じゃから…自分の覚醒に気がついとらんから……
センニン
- ど、どう言う事だ。私は自分が「存在覚醒者」である事は知っているぞ
山々 空々
- その「知っている」と言うのがおかしいんですよ。「自分は目が覚めている事を知っている」とは普通言いません。「目が覚めた」と言うのは感覚であって、知識では無いんですからね
膰
- では、私の能力は……
山々 空々
- 「半覚醒状態」とでも言いましょうか。まだ上がありますよ、貴方のそれはね
膰
- えっ、この人まだ上があるんですか!?ずるっ!
コウノトリ
- 何故貴方が驚くんですか。仕方ないでしょう、山々さんは色々と規格外です
膰
- あっ、照れてる。愛弟子が照れているよ!珍しいね、ほら見てよ、彼照れてるよ!写真撮ろう写真!
墨石 亜蘭
- 馬鹿共は放っておきましょう。山々さんのイレギュラーっぷりは、この際一度置いておくとして、能力についての説明に戻ります
ヴ・ダ
- そうしましょうか。そうですね、ではこの後の説明に必要な、「イド」君を例に紹介していきましょう
膰
- おーい、「イド、出ておいで」お主の事を話すんだとよ〜!
センニン
- ……あっ、はい。お呼びでしたか?イドは出て来ます
イド
- っ!こ、この男何時からそこに!?
山々 空々
- イドはずっと居たと思います。呼ばれたので出て来ただけです
イド
- はい、これがイドさんの能力です。名称は「結果論」となります
ヴ・ダ
- つまりは「結果が先に来る」能力ですね。分かりやすいように、一つ例を行って貰いましょうか「イド君、紅茶を淹れて下さい」
膰
- はい、わかりました!
イド
- イドは紅茶を淹れ始める。キッチンから紅茶を淹れる為に必要な器具を全部取り出して、適切な時間をかけて紅茶を淹れる。つまり、普通に普通の紅茶を淹れた。
システム
- ……これが、結果論?
山々 空々
- 淹れ終わりました、後にも先にもお役御免ですね。失礼致します!
イド
- イドが隣の資料室に通じる扉を使って立ち去って行った。後には普通の紅茶だけが残っている。
システム
- 山々、君の為に紅茶を淹れてくれたみたいだぞ?追いかけてお礼を言ってみるのはどうだい?
墨石 亜蘭
- あ、嗚呼、はい、そうします
山々 空々
- 山々が扉を開けてイドを追う。否、本当は追う必要も無かったのだ。資料室に行っただけなのだから、そこにいるはずなのだし。だが、当たり前のように誰もいなかった。
システム
- なっ!?
山々 空々
- 居ない、のではありませんよ。我々にイド君が見えていないだけです。何時だって、誰だってそうなのですよ
膰
- いや、だが……
山々 空々
- 反応が新鮮で素晴らしいですね!これがイド君の現状です。イド君はですね、これ以上無く存在が希薄なんですよ
コウノトリ
- 存在が、希薄?
山々 空々
- はい。例えるならば、光のような状態になっています。光よりもタチが悪いですかね。何にせよ、普段は見えないんですよ。イドと言う照明のスイッチが、オフになっているんです
コウノトリ
- その例えを借りるなら、名前を呼び、役割を与える事でスイッチをオンにする事が出来るんです。そして役割が終わると、自動的にオフになる
ヴ・ダ
- 成程、理解した。部屋に誰もいなかったのは、スイッチがオフになっているからなのだな。……オフの時は何処にいるのだ?
山々 空々
- 何処にでもいます。良いですか、イド君は「希薄」なんです。希釈されて薄まって居るんです。具体的にはどのくらいかと言うと、イド君の身体を作る全て原子が、宇宙全体に広がっているんです
膰
- は?
山々 空々
- イド君を構成する原子は、宇宙全体に広がっています
膰
- 宇宙全体に?地球ではなく?
山々 空々
- はい。もっと言えば宇宙の外側もなのですが、我々はそこまで観測が出来ないので、一応宇宙全体とだけ
膰
- だから、「何処にでもいる」のか……
山々 空々
- スイッチをオンにすると、全宇宙に存在するイド君が集結してくれるんですよ
コウノトリ
- SF映画みたいな話だ、実感は出来ていないが、理解は出来たと思う
山々 空々
- SF映画だって!?
墨石 亜蘭
- お主は黙っとれ
センニン
- だが、すまない。この能力が「結果論」である理由がわからない。瞬時に現れたりする力は素晴らしい。だが、ただ紅茶を淹れただけに見えるのだが……
山々 空々
- その通りですよ。彼は今、紅茶を淹れただけですからね
膰
- 誰にでも淹れられるだろう。紅茶を瞬間的に出現させたなら兎も角だ。道具を使った、本当に普通に、学べば誰にでも出来る淹れ方だった
山々 空々
- おっ、良いところを突きますね。やはり才能があるんですねェ、貴方
コウノトリ
- …と言うと?
山々 空々
- 「紅茶を瞬間的に出現させる」のは特別な現象ですよね?魔法と呼ばれるような
コウノトリ
- 嗚呼、その通りだ
山々 空々
- つまり、バカスカ紅茶を出現させていたら、それだけ世界に歪みが生まれるんですよ
コウノトリ
- ……いや、お前達だって魔法のような能力を使うだろう。歪みだ何だと言っている場合か?
山々 空々
- それが、言っている場合なんです。能力が特別なのは、その「歪み」を相殺出来るからなんですよ
膰
- 炎を出現させる魔法があるとするでしょう?それは別に、本当に炎を出している訳では無いんですよ
コウノトリ
- ……続けてくれ
山々 空々
- 「ここに突如炎が現れても可笑しくない」と世界に錯覚させる力、それが「炎を出現させる魔法」の正体です
コウノトリ
- 世界に錯覚をさせる事で、何が起きても可笑しくない状況を生み出せる、という事か……
山々 空々
- その通りです。ここでイド君の能力に戻りましょうか。先程も言った通り、イド君は「結果論」です。内容は簡単「結果を先に確定させる」
膰
- 結果を、先に……紅茶を淹れるように頼めば、紅茶の存在が確定すると言う事か
山々 空々
- 飲み込みが早くて大変結構!その通り、悪い言い方をすれば、イド君は紅茶の「ついで」なんですよ
コウノトリ
- 順を追って説明しましょう。
まず初めに、イド君の能力によって「結果」が確定します
膰
- 例えるなら「紅茶」ですね。ここで既に、「紅茶が出現する」未来が確定しています
ヴ・ダ
- 次に世界が「歪み」を感知します。イド君の能力には、歪みを隠す効果は無いのです
膰
- 世界は「紅茶が出現する未来」を消失させようとします。手っ取り早いのは元凶のイド君を消す事です。ですが、イド君は宇宙全体に希釈されてしまっていて、破壊すら難しい
ヴ・ダ
- そして最後に、イド君が「辻褄合わせ」をするんです。世界の「歪み」を生んだ張本人が、「歪み」を是正する
膰
- 理由は単純です。世界から「消えもしないならお前が何とかしろ」と言われるんですよね。お前が決めた「紅茶がある未来」なんだから、お前がちゃんと叶えろよな、って事です
ヴ・ダ
- ……?
山々 空々
- 愛弟子は「だからなんだ?」と言いたげだよ!イド君を傷つけかねないから、口には出さないがねッ!
墨石 亜蘭
- 使い方次第なんですよ、これ。目的が紅茶だからちょっとショボイですが、例えば「平和」だったらどうです?
コウノトリ
- …平和の実現が、約束されていると言う事か?
山々 空々
- そうです。それだけではなく、「平和」と言うのは非常に難しい目標です。実現する為には、途方もない時間がかかるでしょう
膰
- そうだな、だがそれが……
山々 空々
- 気付きましたね?そうです。イド君にとって「目標の実現」とは、世界からの特別指令。必ず達成させられます。実現の邪魔は、他ならぬ世界が許しません
コウノトリ
- つまり、目標が達成されない内は、イド君は不死身ですし、世界は絶対滅びません
膰
- 更に有難い事に、目標は同時進行が可能なんですよね〜!紅茶を淹れて貰いつつ、掃除もして貰えます。分身が出来ちゃうんでね
コウノトリ
- ……ちなみに、今のイドに与えられた、最長とされる目標はなんだ?
山々 空々
- 「世界を守り抜け」です
ヴ・ダ
- ……まるで頓智だな
山々 空々
- ただの頓智ですよ
コウノトリ
- ……さて、能力についてはこれで良いでしょうか。それぞれに与えられた、「世界をだまくらかす力」それが能力です。一部、イド君のような例外はありますがね
膰
- 理解出来たように思う。イド殿について、ここまで教えて貰う必要があったかはわからんが……
山々 空々
- イドは「山田太郎では無い誰か」に関してすこぶる活躍したからのう、覚えておいて損は無いぞい
センニン
- ……そうだ、その人物がわからん。説明をして貰えるか?
山々 空々
- はーい、残念ながらお昼ご飯の時間ですよ。イド君が作ってくれましたから、早く食べて、仕事をして、その後にしましょう
コウノトリ
- ……わかった
山々 空々
- 続く
山々 空々