「山田太郎では無い誰か」と世界滅亡の関連性について説明しないことはあり得ません(その1)
こんにちは、もうこはんです。「みんな会議」にて使用している世界観の説明を兼ねた作品となっております。宜しければ、是非ご覧下さいまし!
- 「山田太郎では無い誰か」と世界滅亡の関連性について説明しないことはあり得ません(その1)
膰
- これは朝の話。
都内のどこかにある、雑居ビルでの出来事。一人の男性が「非後悔」と書かれた事務所らしき施設に足を踏み入れる。室内には既に何人かが到着しており、何やら忙しない雰囲気だった。
システム
- おはようございます。皆様今日もお揃いで何より。勤勉ですね、よくやりますよホント
コウノトリ
- おはようございます、社長。約25分の遅刻です。どの面下げていらしたんですか?
膰
- この面です、美形と自負しております。閲覧料金を設けない優しさを享受して下さい
コウノトリ
- はい、本物の社長ですね。間違いありません
膰
- なんです?偽物のワタクシが現れたような口振りで
コウノトリ
- その可能性がゼロじゃなくなったから言うておるんじゃろうが。こっちは大変だったんじゃぞ!
センニン
- それはお疲れ様でしたねぇ、頑張って凄い凄い
コウノトリ
- ぶち殺してやりたいわい
センニン
- それで?一体何があったんですか。墨石と山々さんが戻って来ているところを見るに、かなり重要な案件だったようですが
コウノトリ
- ウン、ウンウン、その通りさッ!流石の推理だ、我が盟友。驚かないで聞いてくれ。実はつい5分前まで、世界滅亡の危機だったんだよ!!
墨石 亜蘭
- そうでしたか。解決したのですね?
コウノトリ
- ちょっとは驚いてくれよ。まあいい、ウン、無事解決した。「世界線移行」と「イド」で済んだからね
墨石 亜蘭
- なんだ、危機としては下も下じゃないですか。焦らせないで下さいよ
コウノトリ
- ご存知無いんですか?そう言うのはですね、焦ってから言うんですよ
ヴ・ダ
- 貴方にだけは言われたく無かったです。詳細の報告をお願い出来ますか、膰さん
コウノトリ
- いえ、今回の件に関しては私よりもセンニンさんが適任です。お願い致します
膰
- よしわかった、お願いされてやるわい!
センニン
- ……嗚呼、わかりました。既にとても良くわかりましたが、説明をお願いします
コウノトリ
- …む?わかったのにかえ?
センニン
- はい。比較的新人の山々さんもいらっしゃる事ですし、今一度おさらいは必要かと
コウノトリ
- ……申し訳ない、感謝する
山々 空々
- 成程のう、あいわかった!ならば妾が直々に説明をしてやるのじゃ。とくと聞けい!
センニン
- まず、此度の世界滅亡危機は例の「山田太郎では無い誰か」の消滅が原因じゃ。ここまでは良いかのう?
センニン
- 何も良くない
山々 空々
- でしょうね。時に山々さん、貴方は随分の間俗世から離れていたと聞いています。墨石の事ですから、まともな知識も与えられていないはずです
コウノトリ
- 盟友からの信頼が薄い…!?心外だよ、きちんと教えたともさ!名作かつ王道のハリウッド映画を見たろ?アシスタントとしての立ち回りも教えたろ?あ、映画誕生の歴史も教えたぞぅ!
墨石 亜蘭
- 今わかって頂けたと思う。何も教えられていない。故に、一からの説明を求めたい
山々 空々
- その方が良さそうですね。では、初歩の初歩から参りましょうか。解説担当の膰さ〜ん
コウノトリ
- はーい。解説担当の膰です。アシスタントにMs.ヴダをお招きしておりまーす
膰
- はーい、アシスタントのヴダで〜す!膰さんのノリのいい所、かなり好きですよ
ヴ・ダ
- 完全に同感です。真顔なのがなお良し。まずは山々さんを含めた、ワタクシ共……つまり、「存在覚醒者」から教えて頂けますか?
コウノトリ
- はい。「存在覚醒者」とは、人間ならば全員が発症しうる「存在覚醒」を罹患してしまった者の総称です。また「存在覚醒」は「病」として扱われています
膰
- 「病」とは呼ばれていますが、現在治療方法は無いです。それどころか、研究されてすらいません
ヴ・ダ
- ……ならば、発症者は全員、いずれ死に至る、という事か?
山々 空々
- いいえ、違います。「治せない」のではなく「治さなくていい」のですよ。「存在覚醒」とはその名の通りただの覚醒ですからね
膰
- ……ただの、覚醒?
山々 空々
- はい。要は「目が覚めた」状態になったも同然という事です。「自分は何故存在しているのか」と言う問いに、明確な答えを得た者達ですからね
膰
- 「自分の存在意義がわからない」と、進む先もわからず、行くあてもなく、生きる意味すらわかりません。「闇の中にいる」と言う例えもよく使われます。そんな闇から目覚めた者たち。それが「存在覚醒者」なんです
ヴ・ダ
- ……良い事のように聞こえる。だのに、病なのか
山々 空々
- 良い質問ですね。確かに、これだけ聞けば存在覚醒は歓迎すべき現象です。しかし、実際の存在覚醒者は、全く歓迎出来ない状況に陥ってしまうのですよ
膰
- 山々さん、ニュース等で見たことありませんか?頭から触手が生えたり、背骨が異様に発達してバグったキリンみたいになっている人
コウノトリ
- ……嗚呼、確かにある。実物と戦ったが、あの力は凄まじいものだった
山々 空々
- マジですか??アレと戦って生きて帰るとか、流石は山々様ですね、尊敬します
コウノトリ
- 強者とわかってか、露骨に媚び売り出しましたね。その意気や良し
ヴ・ダ
- 私のことはいい。それより説明を。あの化け物共と我々覚醒者、なんの関係がある
山々 空々
- 関係があるも何も、アレらも「存在覚醒者」ですよ。いえ、アレが本来のあるべき姿と言った方が良いのですが
膰
- ……“アレ“が?人を喰らい、かと思えば引き裂き、踏みにじっていたアレが?
山々 空々
- 覚醒者の中でも攻撃的な個体に会ったんですねぇ。人を踏みにじれるサイズ、相当だ。よく逃げ切りましたね
コウノトリ
- いや、倒した。あれ以上被害を拡大させる訳にはいかなかったからな
山々 空々
- ……
コウノトリ
- ……?何故距離を取られるのだ、コウノトリ殿
山々 空々
- 社長は放っておきましょう。それより、解説に戻ります
ヴ・ダ
- 先程述べた通り、覚醒者とは「目覚めてしまった」のです。知らなくて良いことを知ってしまった、と言う事に他なりません
膰
- 自分は何故、存在して「いた」のか……もしも自覚した「存在意義」が、これまでの自分の生き方と大きく異なっていたら?
膰
- ……いや、問題は無いだろう。生き方は自由だ。それは変わらない
山々 空々
- それがあるのですよ。良いですか、ここで言う「存在意義」とは、「こう生きたい」「こう在りたい」と言うような「意思」ではありません
膰
- ……?待て、おかしい。存在意義とは、生きた後に見出す物のはずだ。探す意思が無くては、何も見つけられない
山々 空々
- 本当に何も知らないのですね。知らず知らずの内に覚醒する辺り、山々さんってすこぶる最高ですね
ヴ・ダ
- 同意します。落ち着いて聞いて下さい、山々さん。我々が覚醒した「存在意義」とは、我々の意志とは無関係です
膰
- ならば、誰が
山々 空々
- 当然、世界が
膰
- より詳しく言うのなら、「世界によって “汝、かくあれかし“ と定められているもの」という事ですね
ヴ・ダ
- 世界が?一人一人の在り方を定めているだと?荒唐無稽だ、不可能だ
山々 空々
- 可能ですよ、ならば聞きますが、世界以外に誰に可能です?
膰
- 自分だ。己にのみ可能な事だ。生き方を決めるのは、何時だって自分自身だ
山々 空々
- 嗚呼、なるほど。認識の齟齬がわかりました。良いですか山々さん、貴方の言うことは、非常に正しい。真実です
膰
- そうだろう、そのはずだ
山々 空々
- ですが、「その真実は関係ない」のですよ。生き方は確かに自由です。いえ、寧ろ「だからこそ狂ってしまった」と言っても良い
膰
- だからこそ、狂った……?っ、嗚呼、そういう事か
山々 空々
- おわかり頂けたようで。お察しの通りです。「自由に生きた結果、世界の望む生き方とは異なってしまった」為に起こる発狂、それに伴う狂人の発生。それが本来の「存在覚醒者」なのですよ
膰
- ……発狂するほど、なのか
山々 空々
- どうなのでしょう。我々は発狂しませんでしたからね、詳しくはわかりません
膰
- 「親の期待に応えられなかったどころか、関わった人全員に迷惑してかけておらず、尚且つ自分その事に気が付かずにのうのうと生きていた」気持ちだそうですよ
ヴ・ダ
- ……だが、そんなものは当たり前だ。望まれた通りに生きるなど、余りに難しすぎるではないか。何を望まれているのかさえ、教えられていないと言うのに
山々 空々
- 貴方はそれを成し遂げているんですがね。ですがまあ、どうしようも無いのですよ。自己嫌悪と罪悪感程、我々を苦しめる感情も中々ありませんから
コウノトリ
- そもそも、「存在覚醒」をしてしまう人物は「自分とは何か」「存在意義は何か」を真面目に考えてしまう方ばかりです。故に、気が付いた時に自分に向ける嫌悪も大きいのでしょう
膰
- ……余談にはなるがのう、発狂した者達の見た目が大きく変質してしまうのは、「世界からの温情」じゃよ
センニン
- 温情……?
山々 空々
- 「お前は人では無かったのだ。故に、意義など考えなくても良いのだ」……という事じゃ。悩む生き物は人間だけじゃからの。人がこれ以上悩まず、これ以上苦しまぬように、人から逸脱させるんじゃ
センニン
- ……理解した、と思う。それでは我々が「存在覚醒者」でありながら、発狂しなかったのは、「存在意義と合致した生き方をしていたから」という認識で正しいか?
山々 空々
- 大正解です。私ならば「識別」、社長ならば「継続」、センニンさんなら「言語」と言うように、各々に最適な生き方を選んでいた為、発狂を免れています
膰
- ……さ!取り敢えずここまでにしましょう。続きはまた、朝ごはんの後で
コウノトリ
- 良いのか。世界滅亡の理由を説明しているはずなのだが
山々 空々
- ワタクシはもう察しが付いていますし、先程センニン様が仰った通りですので
コウノトリ
- ウム、「山田太郎では無い誰か」はきちんと居るぞい
センニン
- ならば大丈夫でしょう。少なくとも、朝ごはんを食べる時間くらいはありますよ
コウノトリ
- ……承知した、指示に従おう
山々 空々
- 続く
山々 空々