男装乙女ゲーに転生した俺♂#2
タイトル通りのお話。
- A.M. 8:20 職員室
- ...来ないな。
黒賀 慎介
- 黄崎と別れた後、俺は職員室で担任の先生が来るのを待っていた。
- 待たせてすまなかった。
緑野 広樹
- あ!この抑揚の無い口調は...
- 君の担任の緑野 広樹だ。よろしく。
緑野 広樹
- 緑野 広樹(みどの ひろき)。
常に真顔で校則に厳しい、ツンデレキャラ。
- よろしくお願いします。
黒賀 慎介
- 現実だとかなり威圧感があるな...イケメンだけど近寄り難い感じだ。
- ...君、袖(そで)のボタンが外れているぞ。
緑野 広樹
- 緑野は俺の袖を見て言う。
- す、すみません。
黒賀 慎介
- 俺はすぐさま袖のボタンを付け直した。
- 今後は注意しておくように。
緑野 広樹
- ...そして1つ言っておくが、私はたとえ君が女子であろうと男子として接する。
緑野 広樹
- _ちなみにこの男は唯一主人公が女だという事を知っている。
- つまり“優遇措置(ゆうぐうそち)等は行わない”という意味だ。
緑野 広樹
- 理解したか?
緑野 広樹
- あ、はい。
黒賀 慎介
- ...でも俺女じゃないですよ?
黒賀 慎介
- ゲームでは男装女子だけど、今の俺は正真正銘男だからな。
- 事実はハッキリと言っておかないと。
- ...
緑野 広樹
- あれ?黙ってる。
- やっぱりゲームの進行上、男装女子で突き通さなきゃダメなのか?
- なるほど。もう既に男子としてなりきっているという訳か..
緑野 広樹
- そう呟いた後、緑野は俺を見る。
- その心意気よろしい。
緑野 広樹
- 今後もその気持ちを忘れないように。
緑野 広樹
- では教室に向かおう。
緑野 広樹
- は、はい...
黒賀 慎介
- なんか凄いやる気がある人だって勘違いされて終わった...
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- A.M.8:30 教室
- 黒賀慎介です。1年間よろしくお願いします。
黒賀 慎介
- 俺が会釈すると拍手が鳴った。
- あの転校生可愛くね?
学生A
- それな!女子みてぇ
学生B
- 生徒達は転校生(俺)の話題でざわめく。
- 静かに。
緑野 広樹
- 緑野がそう一声した瞬間、教室が一気に静かになった。
- おぉ...
黒賀 慎介
- 俺はその光景を見て驚く。
- では君は窓側の1番後ろの席へ座ってくれ。
緑野 広樹
- 分かりました。
黒賀 慎介
- 俺は皆の視線を浴びながら席につく。
- よっ!また会えるとは思って無かったぜ。
黄崎 鈴太郎
- 隣の席に座っていたのは、最初に出会った攻略対象の黄崎だった。
- 俺もびっくりしたよ。まさか同じクラスになるなんて。
黒賀 慎介
- まぁ俺は既プレイだからこうなる事は知ってたけど。
- あらためてよろしくな。
黒賀 慎介
- おう!よろしく!
黄崎 鈴太郎
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- P.M.4:00 廊下
- ここは視聴覚室。
黄崎 鈴太郎
- へぇー。
黒賀 慎介
- 放課後、俺は黄崎に校内を案内して貰っていた。
- んで、ここは購買。
黄崎 鈴太郎
- おー結構品揃えいいんだな。
黒賀 慎介
- 俺は購買所の商品を見ながら言った。
- まぁな!ちなみにここのカレーパンは...
黄崎 鈴太郎
- ......だめよ...
教師
- 廊下の角からボソボソと声が聞こえる。
- ...なんか変な声聞こえないか?
黒賀 慎介
- おう、確かに聞こえんな。
黄崎 鈴太郎
- 俺達はすぐさま声のする方へ向かう。
- !
黒賀 慎介
- !
黄崎 鈴太郎
- あ...!
教師
- そこに居たのはシャツがはだけて、顔を赤らめている教師の姿と...
- あーあ、見つかっちゃったか。
桃瀬 朔也
- 今から“お楽しみ”しようとしてたのに。
桃瀬 朔也
- 3人目の攻略対象だった。
- ...
黒賀 慎介
- そうだ。ここで出会うんだったな。
- お、お楽しみってまさか...!
黄崎 鈴太郎
- うん。君の想像通りだよ。
桃瀬 朔也
- 桃瀬 朔也(ももせ さくや)。
多芸多才だが女遊びが激しい、タラシキャラ。
- ...
教師
- 教師はシャツを着直すと、何も言わずに立ち去っていった。
- すみません...なんか邪魔したみたいで。
黒賀 慎介
- 俺はとりあえず桃瀬に謝る。
- あぁ、気にしなくて大丈夫だよ。
桃瀬 朔也
- 桃瀬は俺を見てにこりと微笑んだ。
- ...
黒賀 慎介
- 教師とアレする所を見られたというのに、この男は全く動揺しないんだな...
- ところで君達って2年生だよね?
桃瀬 朔也
- 3年生の棟に何か用でも?
桃瀬 朔也
- あぁ、転校生のコイツに校内見学をしてたんです。
黄崎 鈴太郎
- へぇ、なるほど。
だから覚えてない訳だ。
桃瀬 朔也
- ?
黄崎 鈴太郎
- ...僕がこんな可愛い子を覚えてない筈が無いからね。
桃瀬 朔也
- 桃瀬は俺を見てそう言った。
- え、可愛い?
黒賀 慎介
- 確かにゲームの主人公は可愛いけども、俺の顔は可愛いの部類に入んのか...?
- 俺は窓に映る自分の顔を見て思う。
- 君、近くで見ると女の子みたいだね。
桃瀬 朔也
- ...もしかして“女の子”なの?
桃瀬 朔也
- ちなみにこの男は主人公にとって最も脅威になる存在だ。
- ゲームでも大半はこの男のせいで性別がバレてバッドエンドになる。
- そんな訳無いじゃないですか。
黒賀 慎介
- だけど今の俺は男だから、警戒しなくても大丈夫だな。
- ふふ、冗談だよ。
桃瀬 朔也
- この男子校に女の子が居たら大変な事になっちゃうしね。
桃瀬 朔也
- 桃瀬は笑う。
- ...さて、僕はそろそろ帰るよ。
桃瀬 朔也
- 君達も気を付けて帰ってね。
桃瀬 朔也
- はい。
黒賀 慎介
- はい!
黄崎 鈴太郎
- 桃瀬は俺達に軽く手を振ると、立ち去っていった。
- 色々とすっげぇ先輩だったな...
黄崎 鈴太郎
- だな...
黒賀 慎介
- これで全員と出会った訳だけど、やっぱり皆個性的だな。
- んじゃ俺達もそろそろ帰るか。
黄崎 鈴太郎
- 一緒に帰ろうぜ!黒賀!
黄崎 鈴太郎
- 黄崎は俺の肩をガシッと掴む。
- おうっ
黒賀 慎介
- _でもこの世界も中々悪くないかも。
- 俺はそんな事を思いながら、黄崎と一緒に昇降口へ向かって行った。
- to be continued